
ブラックジャックのインシュランスとは?期待値−7.7%を計算で証明する完全ガイド
ディーラーのアップカードがA。画面に「INSURANCE?」のボタンが出て、カウントダウンが始まる——ブラックジャックで一番迷う数秒だと思います。
このボタンを押すと、1ドル賭けるごとに平均7.7セントが消えていきます。ハウスエッジ(カジノ側の取り分。賭け金のうちカジノが長期的に受け取る割合)で言えば7.7%。メインゲームの0.5%前後(6デッキ・ベーシックストラテジー使用時の目安)と比べると、15倍ほど不利な賭けです。
インシュランスは、ブラックジャックの選択肢のなかで唯一、期待値がマイナスであることが計算で確定しているアクションです。ヒットもスタンドもダブルダウンも状況次第で正解が変わりますが、インシュランスだけは違います。その根拠を、誰でも検算できる数式のかたちで最後まで示します。
ブラックジャックのインシュランスとは?ディーラーのAに賭ける「別ベット」
インシュランス(Insurance/保険)とは、ディーラーのアップカードがA(エース)のときだけ提示される、ディーラーのブラックジャック成立に賭けるサイドベットです。賭け金はメインベットの半額までで、的中すると2対1の配当がつきます。
ディーラーの伏せカードが10・J・Q・Kのいずれかなら、その時点でディーラーのブラックジャックが成立します。インシュランスは、この一点だけを当てにいく賭けです。ブラックジャックのアクションの種類のなかでも、条件が揃ったときにしか出てこない特殊な選択肢だと考えてください。
インシュランスが提示される条件と流れ
ディーラーのアップカードがAになるのは52枚中4枚、つまり約7.7%です。100ハンド遊べば7〜8回はこの判断を迫られる計算になります。
「保険」なのに損失は補填されない — メインゲームとは独立している
ここが一番の誤解ポイントです。インシュランスは、メインベットの負けを埋め合わせる保険ではありません。メインゲームとはまったく独立した、もう1つの賭けとして別々に精算される仕組みです。
そのため「インシュランスが外れて、メインでも負ける」という、両方を失うパターンが普通に起こります。しかも後で見るとおり、この最悪のパターンこそがもっとも高い頻度で発生します。保険という名前から受ける安心感と、実際の損益構造は、切り離して考えたいところですね。
インシュランスの期待値を計算する — 当たれば+2、外せば−1

ご存じない方もいらっしゃるかもしれませんので補足しておきますと、期待値とは「同じ賭けを何度も繰り返したときに、1回あたり平均していくら増える(または減る)か」を示す数字です。プラスなら長期的に得、マイナスなら長期的に損、という単純な指標になります。
伏せカードが10価値になる確率は30.77%
トランプ1組52枚のうち、10として数えられるカードは10・J・Q・Kの4種類×4スート=16枚です。したがって伏せカードが10価値になる確率は、16 ÷ 52 = 4 ÷ 13 = 約30.77%。3回に1回よりわずかに低い、という水準です。
期待値の式「3P − 1」をつくる
インシュランスに1単位を賭けたとします。的中すれば2対1の配当なので利益は+2単位、外れれば賭け金がそのまま没収されて−1単位です。伏せカードが10になる確率をPと置くと、期待値Eは次の1行で書けます。
E = P ×(+2)+(1 − P)×(−1)= 3P − 1
ここにP = 4/13 を入れると、E = 12/13 − 1 = −1/13 = −0.0769。つまりインシュランスの期待値は−7.69%で、5ドル賭けるたびに平均約0.38ドルが消えていきます。
損益分岐点は33.34% — テンが「3枚に1枚」必要
式が1行になっていると、損得が入れ替わる条件もすぐ出ます。3P − 1 = 0 を解くだけで、P = 1/3 = 33.33…% です。
インシュランスが五分に戻る条件
デッキ数で期待値はどう動くか【1〜8デッキ早見表】
実際のテーブルはデッキが有限なので、ディーラーのAが1枚抜けた分だけ確率がわずかに動きます。以下はディーラーのAだけが見えている状態で計算した数字です。自分の手札2枚を情報に加えても、結果は0.01ポイントも動きません。
| デッキ数 | 10価値カード | 未確認カード | 伏せカードが10になる確率 | 期待値(3P − 1) |
|---|---|---|---|---|
| 1デッキ | 16枚 | 51枚 | 31.37% | −5.88% |
| 2デッキ | 32枚 | 103枚 | 31.07% | −6.80% |
| 4デッキ | 64枚 | 207枚 | 30.92% | −7.25% |
| 6デッキ | 96枚 | 311枚 | 30.87% | −7.40% |
| 8デッキ | 128枚 | 415枚 | 30.84% | −7.47% |
| 無限デッキ(理論値) | 全体の4/13 | 無限 | 30.77% | −7.69% |
数字で見ると、デッキが増えるほどプレイヤーに不利になります。1デッキではディーラーのAが1枚抜けた影響が相対的に大きく、残り51枚に対して16枚のテンが残るため確率が31.37%まで上がります。デッキが増えるとその影響が薄まり、理論値の30.77%へ収束していく、という構造です。
ただし、もっとも条件のよいシングルデッキでも−5.88%。33.34%の分岐点には遠く届きません。デッキ数を選ぶことでインシュランスが有利になることは、原理的にありません。オンラインのライブテーブルは6〜8デッキが主流なので、実際に遭遇する数字は−7.40%前後だと考えてください。
実際いくら損をするのか — 10ドルベット・100ハンドで換算する
パーセンテージだけだと実感が湧きにくいので、金額に直します。6デッキのテーブルでメインベット10ドル、インシュランス5ドルを置いた場合の損益がこちらです。
| 場面 | インシュランスあり | インシュランスなし | 差 |
|---|---|---|---|
| ディーラーがブラックジャック(30.87%) | ±0ドル | −10ドル | +10ドル |
| ディーラーはBJでなく、メインに勝ち | +5ドル | +10ドル | −5ドル |
| ディーラーはBJでなく、メインに負け | −15ドル | −10ドル | −5ドル |
| ディーラーはBJでなく、引き分け | −5ドル | ±0ドル | −5ドル |
構造がはっきりします。ディーラーにブラックジャックが出た1パターンでだけ+10ドル得をして、それ以外の3パターンではきっちり5ドルずつ損をする。当たれば2倍のリターンに見えますが、当たる確率は30.87%しかなく、外れる確率が69.13%です。
期待値を計算すると、0.3087 ×(+10ドル)+ 0.6913 ×(−5ドル)= 3.09 − 3.46 = −0.37ドル。1回インシュランスを受けるたびに、平均37セントを置いてくることになります。
これを100ハンド単位で積み上げてみます。ディーラーのアップカードがAになるのは約7.7回なので、インシュランス由来の期待損失は 7.7 × 0.37 = 約2.85ドル。一方メインゲームの期待損失は、総ベット額1,000ドル × ハウスエッジ0.5% = 約5ドルです。
ここで使ったメインゲームの0.5%は、6デッキ・ディーラーはソフト17でスタンド・スプリット後のダブルダウン可・ブラックジャックは3対2配当・ベーシックストラテジー使用という、一般的な条件を前提に置いた数字です。ハウスエッジは卓のルールで動きます。ブラックジャックの勝率を左右する要素としてWizard of Oddsが公開している数字を見ると、配当が3対2から6対5に下がるだけで1.39ポイント、ディーラーがソフト17でヒットする卓ならさらに0.22ポイント不利になります。
合計7.85ドル。毎回インシュランスを取るだけで、期待損失が約57%増える計算になります。前提のハウスエッジを0.4%〜0.6%の範囲で振っても増加率は約47〜71%に収まるので、そこをどう置くかで結論がひっくり返ることはありません。ボタン1つの差としては、正直かなり大きい数字です。
イーブンマネーも中身は同じ賭け — 分岐点まで一致します

イーブンマネー(Even Money)とは、自分がブラックジャックでディーラーのアップカードがAのときに提示される、1対1の配当を確定させる選択肢です。本来のブラックジャックの配当は1.5対1ですが、それを1対1に下げる代わりに引き分けのリスクを消す、という提案になります。
実はこれ、インシュランスと数学的に完全に同じ賭けです。メインベット10ドルでブラックジャックが出た状態で、インシュランス5ドルを置いたと考えてください。ディーラーもブラックジャックならメインは引き分けでインシュランスが+10ドル、ディーラーがブラックジャックでなければメインが+15ドルでインシュランスが−5ドル。どちらに転んでも手元は+10ドルで固定されます。これはイーブンマネーを受けた結果とまったく同じです。
では断った場合はどうなるか。6デッキで自分がA+10、ディーラーがAを見せている状態では、未確認の309枚のうちテンは95枚なので確率は30.74%です。期待値は 1.5 ×(1 − 0.3074)= +10.39ドル。
確定の10.00ドルより、断ったときの10.39ドルのほうが約3.9%有利です。そして 1.5 ×(1 − P)= 1 を解くとP = 1/3。インシュランスの分岐点と小数点以下まで一致します。名前が違うだけで、判断基準はまったく同じだということです。
なお、自分のブラックジャックとディーラーのAが重なる場面は約280ハンドに1回しか訪れません。頻度は低いものの、出たときに迷わないよう結論だけ覚えておくと役に立ちます。
例外はカードカウンティングのときだけ
ここまで一貫してマイナスでしたが、期待値がプラスに転じる条件はたしかに存在します。残りのカードに含まれる10価値カードの比率が1/3を超えたとき、それだけです。
それを実戦で判定する手段がブラックジャックのカウンティングです。Wizard of Oddsが公開しているHi-Lo法の重要指標「Illustrious 18」では、トゥルーカウントが+3以上のときにインシュランスを取るというルールが最優先の項目として挙げられています。
念のため整理しておきますと、Hi-Lo法は10〜KだけでなくAも高位カードとして数えるため、テンの濃度そのものを測る指標ではありません。トゥルーカウント+3はあくまで実務上の近似値であり、厳密な条件は先ほどの「テンが3枚に1枚」のほうです。
この例外はオンラインでは実質使えません
そしてカウンティングを使えたとしても、これは必勝法ではありません。分岐点を超えた局面での期待値がわずかにプラスになるだけで、1回ごとの結果は大きく振れます。7割近くは外れる賭けであることに変わりはない、という点は押さえておいてください。
それでもインシュランスを取りたくなる心理と、その向き合い方

数字がここまではっきりしていても、手が伸びてしまう場面があります。私自身、手札の合計が20で仕上がっている状態でディーラーのAを見たときは、一瞬だけ迷いました(笑)。
この「20だから守りたい」という感覚には理由があります。せっかく強い手札ができたのに引き分けや負けで終わるのが惜しい、という損失回避の心理です。ただ、インシュランスの期待値は自分の手札とは無関係に−7.40%のまま動きません。20で取っても12で取っても、数字はまったく同じです。
もう一つは「保険」という言葉の効果です。本来の保険は、めったに起こらない大損害に備えて少額を払う仕組みですが、インシュランスは30%の頻度で起きる出来事に対して掛け金の半分を払う設計になっています。掛け率としてはかなり割高です。
実務的な対処はシンプルで、テーブルに着く前に「インシュランスは押さない」と決めておくことです。判断を毎回その場でやり直すから迷うのであって、方針として固定してしまえば悩む時間そのものがなくなります。どの手札でどう動くかを一覧にした行動表にもインシュランスを取る場面は1つも載っていません。この表の原型は1956年に4人の米国人数学者が発表した論文で、それ以来70年間ずっと結論は変わっていない、という重みのあるルールです。
資金管理の観点でも、インシュランスは1ハンドあたりの投入額を1.5倍に増やす行為です。分散(結果の振れ幅)が大きくなる分、同じ資金でも早く尽きやすくなります。勝率とハウスエッジの関係を押さえたうえで、余裕のある金額の範囲で楽しむのが現実的な向き合い方だと考えています。
インシュランスは、ブラックジャックのなかで唯一「考えなくていい」選択肢です。ヒットやスタンドのように状況判断が必要な場面と違い、答えが常に同じだからこそ、覚えてしまえば二度と迷いません。luckraise.io としては、この1つを外すだけで期待損失が57%減ることのほうを、はるかに大きな成果だと考えています。
なお、日本政府は、海外で運営されているオンラインカジノでも日本国内から賭ければ賭博罪(刑法185条)にあたるという見解を示しています。法的な扱いはオンラインカジノの違法性と最新の法改正で解説しています。
よくある質問(FAQ)
カードカウンティングで残りカードの偏りを把握している場合を除き、使わないのが正解です。期待値は6デッキで−7.40%、理論値でも−7.69%と一貫してマイナスで、自分の手札の強さによって変わることもありません。ベーシックストラテジーにもインシュランスを選ぶ場面は1つも登場しません。
配当は2対1です。メインベットの半額を賭けて的中すると、賭け金と合わせて3倍の金額が戻ります。メインベット10ドル・インシュランス5ドルなら15ドルが払い戻され、メインベットの10ドルの負けと相殺してちょうど±0になります。
約30.77%です。52枚のうち10として数えられるカードは10・J・Q・Kの16枚なので、16 ÷ 52 = 4 ÷ 13 で算出します。実際のテーブルではデッキ数によって多少動き、1デッキで31.37%、6デッキで30.87%、8デッキで30.84%です。
残りカードのうち10価値カードが33.34%を超えていれば、期待値がプラスに転じます。期待値の式 3P − 1 が0になる点がP = 1/3 だからです。ただし自然な比率は30.77%なので、カードカウンティングで偏りを追跡していないかぎり、その状態を判別することはできません。
受けない方が有利です。イーブンマネーはインシュランスと数学的に同じ賭けで、6デッキの場合、断ったときの期待値が10.39ドルなのに対し、受けると10.00ドルで確定します。差は約3.9%で、損益分岐点もインシュランスと同じ33.34%です。
載っていません。ベーシックストラテジーはヒット・スタンド・ダブルダウン・スプリット・サレンダーの最適解を示す表で、インシュランスを取るべき場面は存在しないため項目自体がありません。1956年に原型が発表されて以来、この結論は変わっていません。
実質的に困難です。ライブテーブルの多くはシューの浅い段階でシャッフルされる設計で、カードが最後まで消化されないため、トゥルーカウントを積み上げる前にリセットされてしまいます。そのため、インシュランスがプラス期待値になる局面はオンラインではほぼ発生しません。

